紛争鉱物と責任ある調達の基本(CMRT・EMRT・AMRT・UFLPA)

虫眼鏡越しに見た金色の鉱石

顧客から届くCMRTの依頼、対象が広がるEMRTとAMRT、米国の税関で貨物が止まるUFLPA。鉱物の調達をめぐる要求は、ここ数年で対象の鉱物も地域も広がりました。本記事では、責任ある調達で何が求められ、何を集め、集めた情報をどう確かめるかを、KUMU Worksのnoteで解説してきた内容をもとに1本の流れに整理します。

この記事のポイント

  • 紛争鉱物の規制は3TG(スズ・タンタル・タングステン・金)から始まり、報告の対象はコバルトやリチウムなどにも広がっている
  • CMRT・EMRT・AMRTは、いずれもRMIの報告テンプレートで、対象の鉱物が異なる。サプライヤーから含有の有無、原産国、製錬所の情報を集める
  • UFLPAは、新疆ウイグル自治区との関わりやエンティティ・リストへの掲載で輸入を止める仕組みで、原材料の段階までさかのぼった確認が要る
  • サプライヤーの自己申告だけに頼らず、外部のデータで継続的に確かめる体制に移したい

責任ある調達で何が求められているか

「責任ある調達」という言葉が指す範囲は広く、環境、人権、労働などさまざまな論点を含みます。電子部品の調達・品質の担当者にとって、なかでも具体的な対応を迫られることが多いのが、鉱物の出所と強制労働をめぐる2つの要求です。

1つは、紛争鉱物とその周辺の鉱物について、どこで採掘され、どの製錬所を通ったかを報告することです。もう1つは、米国のウイグル強制労働防止法(UFLPA)への対応で、新疆ウイグル自治区や特定の企業とのつながりがないことを示すことです。

両者は根拠となる法律も、確かめる対象も違います。ただ、どちらも「部品の中身を、原材料の段階までさかのぼって説明できるか」を問うている点は同じです。

紛争鉱物の規制は3TGから始まった

紛争鉱物とは、武力紛争や人権侵害の資金源になる形で採掘・販売される鉱物のことです。現在は主に、スズ(Tin)、タンタル(Tantalum)、タングステン(Tungsten)、金(Gold)の4つを指し、頭文字から「3TG」と呼ばれます。主な産出地は、コンゴ民主共和国(DRC)とその周辺国です。

3TGは電子部品に欠かせない材料でもあります。スズは抵抗器や充電式電池に、タングステンはトランジスタやダイオード、一部のマイクロプロセッサに、タンタルはコンデンサやインダクタ、メモリチップに使われています。部品を扱う企業である以上、ほぼ避けて通れないテーマです。

規制の柱は2つあります。

  • 米国ドッド=フランク法第1502条:2010年制定。対象企業に、3TGがDRCとその周辺国に由来するかを確かめる合理的な原産国調査(RCOI)を行い、米国証券取引委員会(SEC)に報告することを求める
  • EU紛争鉱物規則:2017年に可決、2021年1月1日に発効。3TGをEUに輸入する事業者に、OECDのデューデリジェンス・ガイダンスに沿った5段階の枠組みでの調査を求める

中国、カナダ、オーストラリア、日本などにも同様のガイドラインがありますが、多くは法的な拘束力のない任意のものです。それぞれの規制の中身や電子部品での使われ方は、noteの記事「スマホ・PCにも使われる紛争鉱物とは?」で詳しく解説しています。

何を集めるか:CMRT・EMRT・AMRT

規制や顧客の要求に応えるために、サプライヤーから情報を集める共通の様式として使われているのが、Responsible Minerals Initiative(RMI)の報告テンプレートです。対象の鉱物ごとに3種類あります。

テンプレート 対象の鉱物 公開と背景 最新版(2025年時点)
CMRT(紛争鉱物報告テンプレート) スズ、タンタル、タングステン、金(3TG) 2013年に公開。ドッド=フランク法第1502条への対応のためにつくられた CMRT 6.5
EMRT(拡張鉱物報告テンプレート) コバルト、雲母(マイカ)、銅、天然黒鉛、リチウム、ニッケル 2021年10月に公開。クリーンエネルギーや防衛、ハイテク産業に欠かせない鉱物への要求に対応 EMRT 2.0
AMRT(追加鉱物報告テンプレート) CMRTとEMRTの対象にない鉱物 2024年10月に正式公開。旧称はパイロット報告テンプレート(PRT) AMRT 1.21

いずれもRMIによる。対象の鉱物と版は2025年時点の情報で、更新される可能性がある。

3つのテンプレートは構成がよく似ています。どれも、製品にその鉱物が含まれているか、原産国はどこか、どの製錬所・精製業者を通ったかを、サプライヤーに申告してもらう形です。OECDのデューデリジェンス・ガイダンスに沿っている点も共通しています。CMRTの手順に慣れていれば、EMRTやAMRTにも対応しやすいつくりです。

注意したいのは、テンプレートが定期的に改訂されることです。CMRTは、既知の製錬所リストの更新などのため、通常は年に1〜2回改訂されます。EMRTでは、EUの電池規則などの要件に合わせて対象の鉱物が見直されてきました。依頼する側と回答する側で版がそろっていないと、集計の手戻りにつながります。

鉱物の出所を追えないことの影響は、罰則にとどまりません。2024年12月には、DRCが米国の大手電子機器メーカーを、自国で違法に採掘された鉱物を調達しているとして訴える事態も起きています。評判への打撃に加えて、規制当局の監査や調査を招くきっかけにもなります。3つのテンプレートの違いと最新版の詳細は、「CMRT、EMRT、AMRTとは何か?」にまとめています。

強制労働という別の軸:UFLPA

紛争鉱物の報告が「どの鉱物が、どこを通ったか」を問うのに対して、UFLPAは「新疆ウイグル自治区や特定の企業と、どこかでつながっていないか」を問います。

UFLPAは2021年12月に成立し、2022年6月に施行された米国の法律です。新疆ウイグル自治区で全部または一部が採掘・生産・製造された物品と、UFLPAエンティティ・リストに載った企業の物品は、強制労働によるものと推定されます。この推定は輸入者が反証しない限り覆らず、物品の輸入は禁止されます。

noteの記事を公開した2025年4月の時点で、状況は次のとおりでした。

  • 米国税関・国境警備局(CBP)が施行後に差し止めた貨物は約1万件、総額35億ドルを超えていた
  • エンティティ・リストは、2022年6月の公開時の21社から、2024年秋には70社を大きく上回る規模になっていた
  • 差し止めた貨物の件数の約半分を電子業界の製品が占め、2024会計年度の第3四半期までには、差し止めた貨物の総額の約90%が電子産業に集中していた

当初、優先対象とされたのは綿花、トマト、ポリシリコンでした。いまでは太陽電池モジュール、リチウムイオン電池、自動車部品などにも差し止めが及んでいます。差し止めを解いてもらうには、サプライチェーンのトレーサビリティや受け渡しの履歴を示す書類を大量に提出しなければならず、法務の専門家の助けが要ることも少なくありません。

自社が直接取引していなくても、下位のサプライヤーを経由してつながっている可能性があります。そのため、調達先を原材料のレベルまでさかのぼって可視化するサプライチェーン・マッピングが求められます。背景や執行の動き、製造業の対策は「世界の製造業に影響を与えるウイグル強制労働防止法(UFLPA)とは?」で詳しく解説しています。エンティティ・リストはその後も追加が続いており、最近の追加とサプライチェーンへの影響は、当サイトの資料「UFLPA Entity Listに43社追加」で分析しています。

集めた情報をどう確かめるか

テンプレートを配って回答を集めても、それで終わりではありません。回答はサプライヤーの自己申告であり、サプライヤーには自社をよく見せたい動機もあります。集めた情報を確かめる工夫が要ります。

1つ目は、調査の目的を絞ることです。サプライヤーの「調査疲れ」は現実の問題で、目的のはっきりしない調査票は、求める情報を引き出せません。2回目以降の調査は、これまでの評価で欠けている部分を埋めることに絞ります。

2つ目は、サプライヤーの申告以外のデータを使うことです。年1回の調査では、調査と調査のあいだに起きる制裁リストへの掲載、災害、経営の悪化を見落とします。外部のデータで継続的に監視すれば、調査票の質問を減らし、サプライヤーの負担も軽くできます。

3つ目は、サプライヤーとの対話を続けることです。外部データを使うことは、サプライヤーとの関係を軽く見ることではありません。期待や長期の目標を共有しておくことで、問題が見つかったときに協力して解決しやすくなります。

この3点は、「テクノロジーを活用した半導体サプライヤに対する監査対応のベストプラクティス」で詳しく取り上げています。

調達・品質・サステナビリティ担当がいま取り組みたいこと

1 自社に求められている報告の範囲を確かめる

顧客や輸出先がどの規制に対応しているかで、求められるテンプレートや調査の深さは変わります。3TGだけでよいのか、電池材料を含むEMRTまで要るのか、米国向けの製品でUFLPAへの備えが要るのかを、製品ごとに整理します。

2 テンプレートの版と対象をそろえる

CMRTは年に1〜2回改訂され、EMRTやAMRTも対象の鉱物が見直されています。社内で使う版、サプライヤーに依頼する版、顧客から求められている版がそろっているかを、改訂のたびに確かめます。

3 サプライチェーンを原材料の段階までたどる

UFLPAでは、直接の取引先だけを見ても十分ではありません。下位のサプライヤーや製造拠点がどこにあるかを可視化し、新疆ウイグル自治区やエンティティ・リストとのつながりを確かめます。米国に輸入する企業には、CBPのACEポータルで自社の輸入データを監査することや、中国への依存が大きい場合は調達先を分散することも勧められています。

4 年1回の調査から、継続的な監視に移す

調査票の回収を年中行事にとどめず、制裁リストへの掲載や製造拠点での事故などを日々追える体制にします。自己申告と外部データを突き合わせることで、調査の質問も絞り込めます。

Z2Dataで鉱物報告とサプライヤーの監視を効率化する

数千のサプライヤーから届くCMRT・EMRT・AMRTを手作業で管理するのは、顧客の要求や規制が増えるほど難しくなります。Z2Dataの「Responsible Minerals」の機能では、次のことができます。

  • 報告の一元管理:CMRT・EMRT・AMRTの依頼、回収、管理をひとつのプラットフォームで行う
  • 製錬所の照合:RMIの適合製錬所リストと照合し、リスクの高い調達源や適合していない調達源に印を付ける
  • 規制の監視:重要鉱物に関する規制やデューデリジェンスの要件を、最新のデータベースで追う
  • 依頼の自動化:サプライヤーへの依頼と回収を自動化し、手作業とミスを減らす

あわせて、Supply Chain Watchでは、部品ごとにTier 1サプライヤーの製造拠点を把握し、国別の依存度を確かめられます。製造拠点に影響する出来事が起きたときには、アラートで知らせます。RoHSやREACHを含む製品コンプライアンス全般の管理には、Compliance Managerを使えます。

KUMU Worksは、Z2Data LLCの日本総代理店として、導入から運用までを日本語で支援しています。自社の鉱物報告やUFLPAへの備えをZ2Dataでどこまで効率化できるかを確かめたい場合は、無料トライアルかデモの依頼からお問い合わせください。

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この記事で取り上げたテーマを、KUMU Worksのnoteで詳しく解説しています。

「Z2Data記事の翻訳」は、Z2Data LLCの記事をKUMU Worksが許可を得て翻訳したものです。日付はnoteでの公開日です。

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