プリント基板の値上がりと品薄が同時に進む理由

電子部品が実装されたプリント基板

メモリの値上がりに注目が集まる一方で、そのチップを載せるプリント基板(PCB)も、材料の高騰と納期の長期化が進んでいます。原因はひとつではありません。AIサーバー向けの需要、ガラスクロスの供給集中、銅の高騰、中東情勢が重なっています。本記事では、Z2Dataの分析をもとに、いま何が起きているのか、日本の調達・設計担当が何に取り組むべきかを整理します。

この記事のポイント

  • 主力グレードの銅張積層板は前年比270%超の値上がりで、納期は最長6か月に延びている
  • AIサーバー需要、ガラスクロスの供給集中、銅の高騰、中東情勢の4つの要因が重なっている
  • ガラスクロスの供給は日本の日東紡に集中し、割当に入った積層板メーカーには三菱ガス化学とレゾナックも含まれる
  • 基板を材料のレベルまで見える化し、代替材の評価と調達計画の見直しを前倒ししたい

メモリの陰で進むプリント基板の逼迫

2026年に入っても、メモリの値上がりは止まっていません。リードタイムは20週、24週と延び、長いものでは40週に達しています。メモリが足りなくなった背景は、noteの記事「なぜ今、メモリチップが足りないのか?」で解説しています。

注目がメモリに集まる一方で、そのメモリやマイコン、電源ICを実装するプリント基板でも、同じように価格の上昇と供給の逼迫が進んでいます。通信、自動車、航空宇宙・防衛、民生機器と、半導体を使う産業はどれも基板を使います。部品がそろっていても、基板が手に入らなければ製品は組み上がりません。

基板の材料はどこまで値上がりしたか

プリント基板は、銅箔とガラスクロス、樹脂を何層にも重ねてつくります。6層基板を例にとると、層と原材料の構成は次のとおりです。

6層のプリント基板の断面図。番号1〜8で各層を指し、層の名前と原材料を右に記す 6層のプリント基板の断面図。番号1〜8で、下の一覧の各層を指している
  1. シルク印刷エポキシ系またはアクリル系のインク、酸化チタン顔料
  2. ソルダーレジストエポキシアクリレート樹脂、シリカまたは硫酸バリウムのフィラー
  3. 外層の銅(L1)銅箔と電解銅めっき
  4. プリプレグガラスクロスと、Bステージ(半硬化)の樹脂
  5. 内層の銅(L2〜L5)コアに張り合わせた銅箔
  6. コア(銅張積層板)銅箔、ガラスクロス、硬化済みの樹脂、シリカフィラー、難燃剤
  7. めっきスルーホール(ビア)超硬ドリルで穴をあけ、パラジウム触媒で無電解銅の下地をつけてから電解銅めっきをかける
  8. 表面処理(露出したパッドのみ)ENIGはニッケルと金、ENEPIGはさらにパラジウムを使う。ほかに置換銀、置換スズ、HASL、OSP

下半分は上半分と対称(L6の銅、ソルダーレジスト、シルク印刷)

6層基板の層構成と原材料(断面の模式図。縮尺は実際と異なります)。出典:Z2Data

材料の種類が多い分、どれか1つの採掘や加工、生産が滞るだけで、影響はすぐ基板の供給に及びます。特に供給が逼迫している主な材料と、その値動きは次のとおりです。

材料 基板での役割 値動き
銅張積層板(CCL) 基板の芯材 主力グレードで270%超の上昇。納期は最長6か月
前年比
プリプレグ 層の接着と絶縁 一部メーカーで約180%の上昇
2025年8月→2026年8月
ガラスクロス 積層板とプリプレグの補強材 主要品番(7628・2116・1080)で約140%の上昇
2025年7〜9月期から
銅 配線 電気銅と標準銅箔。1kgあたり約14.6ドル(約2,300円)で、37%の上昇
2026年9月時点・前年同月比。元記事の値は1ポンド(約454g)あたり約6.64ドル
エポキシ樹脂 積層板やレジストの樹脂 一部メーカーで納期が3週から15週に延びた
硫黄・硫酸 銅めっき 硫黄は最大120%、硫酸は最大160%の上昇。その後はやや落ち着いた
2026年上半期

数値はいずれもZ2Dataによる。円は1ドル=157円で換算。

銅は2026年の平均でも、2025年を約40%上回っています。

積層板では、建滔積層板(Kingboard)、生益科技(Shengyi)、三菱ガス化学、レゾナック、台光電子材料(EMC)、台燿科技(TUC)といった主要メーカーが、そろって割当(アロケーション)に入りました。発注しても、希望する量と納期で受けてもらえるとは限らない状態です。

供給を絞っている4つの要因

メモリ不足は、主な原因を1つか2つに絞り込めます。これに対してプリント基板では、原因がより多岐にわたります。いま重なっているのは、性質の違う次の4つの要因です。

AIサーバーが基板材料を大量に使う

一部の推計では、AIサーバー1台が使う基板材料は、従来のサーバーの10〜15倍に上ります。基板メーカーはメモリ市場と同じく、AI向けの顧客を優先しています。その分、ほかの用途では納期が延び、入手性が落ちています。

ガラスクロスの供給が日本の1社に集中している

基板に使う特殊なガラスクロスは、ほぼ日東紡1社が生産しています。Z2Dataによれば、同社のシェアは低熱膨張(低CTE)ガラスで約90%、低誘電(低Dk)ガラスで60〜70%に達します。

日東紡は増産を進めていますが、伸びは前年比で約20%にとどまり、需要の増え方には追いついていません。より大規模な増産は2027年に予定されています。基板の大型化でガラスクロスの使用量そのものも増えており、少なくとも2027年の増産までは、逼迫が続くと見ておくのが妥当です。

この逼迫は基板にとどまりません。低熱膨張のガラスクロスは半導体のパッケージ基板にも使われており、AMDはその不足を理由に、FPGAやSoCのパッケージ基板の材料の調達先を切り替えるとPCN(製品変更通知)で知らせています。詳しくはnoteの記事「ガラスクロス不足は“次の半導体ボトルネック”」で整理しています。

銅の採掘が需要に追いつかない

配線の材料である銅は、産業界の旺盛な需要に採掘が追いついていません。さらに米トランプ政権が通商拡大法232条にもとづいて銅製品に課した関税が、供給を一段と圧迫しています。

中東情勢が化学品とエネルギーに波及している

イラン紛争は、中東の石油化学製品の生産に影響しています。2026年の大半にわたってホルムズ海峡の通航が滞り、中国の輸出規制も重なって、2026年上半期には銅めっきに使う硫黄と硫酸の価格が急騰しました。アジアの基板メーカーは中東の石油・エネルギーに頼っているため、エネルギーコストの上昇も製造原価を押し上げています。

日本企業にとっての意味

供給が逼迫している材料のつくり手には、日本企業も名を連ねています。ガラスクロスの日東紡、そして割当に入った積層板メーカーの三菱ガス化学とレゾナックです。

ただし、「日本のメーカーから調達していれば安心」とはいきません。割当は世界中の顧客を対象に行われ、基板メーカーはAI向けを優先しています。影響の大きさを左右するのは、調達先がどこの会社かよりも、自社の基板がどのグレードの材料を使い、割当のなかでどの順番で供給を受けられるかです。

もう1つの課題は、基板が部品の管理から外れやすいことです。プリント基板は図面で発注する一品ものなので、型番で管理する半導体や受動部品と違い、部品データベースやBOMのリスク管理の対象に入っていないことが少なくありません。材料の値上がりや割当の情報が、発注の段階になるまで見えないことがあります。

調達・設計担当がいま取り組みたいこと

1 製品ごとに基板の材料グレードを洗い出す

高多層の基板や高速伝送の基板ほど、低CTE・低Dkの特殊なガラスクロスを使います。どの製品のどの基板がこうした材料に頼っているかを、まず一覧にします。供給が細ったときに影響を受ける製品の範囲が、それで見えます。

2 基板メーカーに割当の状況と納期を確かめる

見積の有効期限や、価格改定の予定もあわせて確認します。割当の状況は材料メーカーごとに違うため、採用している積層板の銘柄まで聞いておくと、次の手が打ちやすくなります。

3 代替材料の評価を前倒しする

積層板の銘柄を変えるには、設計の見直しや信頼性の再評価に時間がかかります。供給が細ってから動いたのでは間に合わないため、候補の評価をいまのうちに始めます。

4 基板に載せる部品の動きもあわせて追う

基板の納期が延びれば、実装する部品の手配時期もずれます。メモリをはじめ、部品側の価格・リードタイム・在庫の動きを基板とあわせて追うことで、生産計画の手戻りを減らせます。

Z2Dataで基板と部品の調達リスクに備える

2026年は、プリント基板の製造を支えるサプライチェーンのあちこちに負荷がかかりました。上がり続ける価格と読みにくい入手性に、リスクを見据えて手を打てる企業ほど、調達を安定させ、生産を止めずにすみます。

サプライチェーンリスク管理(SCRM)のプラットフォームであるZ2Dataは、電子部品のサプライチェーンを見える化し、調達の判断に必要なデータを提供します。

  • 10億点以上の電子部品のデータベース:技術仕様にもとづいて1,000以上の品目に分類
  • パラメトリック検索:技術仕様に加えて、製造の情報、原産国(COO)、規制への適合状況、ライフサイクルの予測でも部品を絞り込める
  • 市場のデータ:入手性、価格、リードタイム、在庫、代替品の価格と入手性から、市場の動きとその背景をつかめる

KUMU Worksは、Z2Data LLCの日本総代理店として、導入から運用までを日本語で支援しています。いまの市場で基板や部品をどう調達するか、Z2Dataでどこまで見えるかを確かめたい場合は、無料トライアルかデモの依頼からお問い合わせください。

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「Z2Data記事の翻訳」は、Z2Data LLCの記事をKUMU Worksが許可を得て翻訳したものです。日付はnoteでの公開日です。

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