RoHS・REACH・PFAS 電子部品の化学物質規制を整理する

ビルの前ではためく欧州連合(EU)の旗

電子部品の化学物質規制というと、RoHSとREACHがまず挙がり、最近はPFASも話題に上ります。3つとも「有害な化学物質を減らす」規制ですが、対象の範囲も、規制の仕組みも、企業に求められる対応も大きく違います。本記事では、KUMU Worksのnoteで解説してきた内容をもとに3つの規制の違いを整理し、調達・品質・設計の担当がどこから手を付ければよいかをまとめます。

この記事のポイント

  • RoHSは電気電子機器に含まれる10物質の使用を制限する、対象の決まった規制
  • REACHは化学物質全般の登録と、SVHCリストへの追加が続く規制。2026年2月の更新でSVHCは253物質になった
  • PFASは1万5,000種類以上の化学物質群で、米国では報告義務と州ごとの規制が進んでいる
  • 3つとも、部品ごとの含有情報をBOMの単位で把握していることが対応の前提になる

3つの規制は何が違うのか

電子部品にかかわる化学物質規制のなかで、問い合わせが多いのがRoHS、REACH、PFASの3つです。名前はよく並べて語られますが、中身はまったく別の規制です。

違いを一言でいえば、RoHSは「電気電子機器に入れてはいけない物質を決める」規制、REACHは「EUで扱う化学物質を登録させ、懸念のある物質を段階的に絞り込む」規制、PFASは「1つの規制ではなく、特定の化学物質群に対する各国・各州の規制の総称」です。

まず、3つを並べて見てみます。

RoHS REACH PFAS
何を対象にするか 電気電子機器(11の製品カテゴリ) EU域内で製造・輸入される化学物質全般 1万5,000種類以上のPFAS化合物
規制の仕組み 決められた10物質の使用を制限 化学物質の登録・評価・認可・制限。SVHCリストを定期的に更新 米国の連邦の報告義務と、州ごとの使用制限が中心
企業がやること 製品が10物質のしきい値を超えていないことを示す SVHCの含有(重量比0.1%超)を申告し、問い合わせに回答する 自社製品のどこにPFASが使われているかを特定する
物質の数の変化 2015年の改正で6物質から10物質に 6か月ごとに追加を検討。2026年2月の更新時点で253物質 報告対象は約1,400種類(米国EPAの規則)

数値はいずれも、下記のnote記事の公開時点の内容による。

以下、それぞれの規制のポイントと、電子部品の調達・品質担当が気を付けたい点を順に見ていきます。

RoHS:対象の決まった、分かりやすい規制

RoHS(有害物質の使用制限)は、2006年7月からEU加盟国で施行されている指令です。最初はカドミウム、水銀、鉛、六価クロム、PBB、PBDEの6物質が対象でした。2011年のRoHS 2で対象製品の範囲が広がり、2015年のRoHS 3でフタル酸エステル4物質(DEHP、BBP、DBP、DIBP)が加わって、いまの10物質になっています。

対象の製品は、大型・小型の家庭用電化製品、通信機器、医療機器、監視・制御装置など11のカテゴリに分かれます。一方で、軍事用装備品や宇宙用の機器、大規模な固定式設備などは適用除外です。自社の製品がどちらに当たるかは、対応の出発点になります。

RoHSはEUにとどまらず、各国の規制の手本にもなりました。中国版RoHS、英国版RoHS、日本のJ-MOSSなどがその例です。中国版RoHSは2024年6月の改正で、EUが2015年に加えたフタル酸エステル4物質を規制物質に追加し、2026年1月からEUと足並みをそろえる予定とされていました。

物質が10種類から増えるかどうかも注目点です。2022年には、難燃剤のTBBPAと中鎖塩素化パラフィン(MCCPs)を追加する提案が出されましたが、note公開時点(2025年3月)では保留のままでした。

対象製品、適用除外の一覧、認証の流れは、noteの記事「RoHS規制とは?規制対象と最新の動向を分かりやすく解説」で詳しく解説しています。

REACH:物質が増え続ける規制

REACH(化学物質の登録・評価・認可および制限)は、2007年6月に発効したEUの規則です。RoHSのように対象物質を固定して制限するのではなく、化学物質全般を対象に、登録・評価・認可・制限という4つの仕組みで管理します。EU域内で年間1トンを超える化学物質を扱う企業は、欧州化学品庁(ECHA)への登録が必要です。

電子部品を扱う企業にとって特に影響が大きいのは、高懸念物質(SVHC)のリストです。発がん性や生殖毒性、環境中での残留性などが認められた物質がリストに加えられ、製品に重量比0.1%を超えて含まれる場合は、申告や問い合わせへの回答(45日以内)が求められます。

REACHの仕組みと登録の流れは、「REACH規制とは?最新のSVHCリストと企業が取るべき対策」で解説しています。

SVHCは半年ごとに増えていく

ECHAは6か月ごとに、新しい物質をSVHCリストに加えるかどうかを検討しています。つまり、一度確認して終わりにはできません。

  • 2025年1月の更新:5物質が加わり、247物質に。Z2Dataのデータベースで、SVHCに関わる部品が20万点以上あることが確認された(2025年1月の更新の解説)
  • 2026年2月の更新:ビスフェノールAF(BPAF)とn-ヘキサンが加わり、253物質に。該当する部品は約110点で、電源ラインフィルタ、電源入力コネクタ、スイッチに多かった(2026年2月の更新の解説)

2つの更新を比べると、影響の出る部品の種類がまったく違うことが分かります。2025年1月の回では、影響を受けた部品の97%をチップ抵抗器、ツェナーダイオード、固定インダクタの3品目が占めました。2026年2月の回は、電源ラインフィルタ、電源入力コネクタ、スイッチが中心です。追加された物質が、どの材料に、どんな形で含まれているかによって、影響の出る範囲は大きく変わります。

2026年2月の回で加わったBPAFは、モールドコンパウンドや封止材、接着剤などに使われる樹脂の成分です。n-ヘキサンは製造工程の洗浄・脱脂に使う溶剤で、部品に残るとすれば微量の残留としてです。電気的な機能を担う材料ではないぶん、部品の仕様書だけでは見えにくいのが特徴です。

同じ回では、ビスフェノールF(BPF)をSVHCに指定する提案が撤回されたことも報告されています。ただし、新しい根拠が示されれば将来の更新で再び検討される可能性があります。リストに載っていない物質でも、提案の段階から動きを追っておくと、追加が決まったときの対応に余裕が生まれます。

EU以外にも広がるREACH型の規制

REACHと似た仕組みの規制は、EUの外にも広がっています。たとえばトルコのKKDIK(トルコ版REACH)は、国内で化学物質を製造・輸入する企業に登録を求める規制です。note公開時点(2025年3月)では、2026年、2028年、2030年に期限を設けて段階的に施行される予定とされていました。EUのREACHと違い、登録に有資格の専門家の承認が必要な点に注意が必要です。

PFAS:規制が広がりつつある化学物質群

PFAS(パーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質)は、1万5,000種類以上ある合成化学物質の総称です。防水性・防汚性・耐熱性に優れ、調理器具や衣料品だけでなく、電子機器にも広く使われてきました。一方で、人体や環境に長く残ることから「永久化学物質」とも呼ばれ、規制の動きが強まっています。

RoHSやREACHと違い、PFASには1本で全体をカバーする規制がありません。noteで取り上げた米国の例では、次の2つの動きが進んでいます。

  • 連邦の報告義務:米国EPAが2023年10月に、約1,400種類のPFASについて、2011年から2022年までの使用状況を報告させる規則を公表した。2024年9月時点で、ほとんどの企業の報告期限は2026年1月まで延期されていた
  • 州ごとの規制:カリフォルニア州、コロラド州、ミネソタ州、メイン州などが、製品カテゴリごとにPFASの使用を減らし、なくしていく法案を進めている

電子部品との関係も深く、Z2Dataの調査ではPFASを含むことが確認された電子部品が約4万点ありました。ケーブル、コンデンサ、プリント基板などに含まれ、半導体の製造工程でもフォトリソグラフィーやパッケージ材料に欠かせない材料になっています。

PFASが電子部品のどこに使われているかと、規制の詳細は「電子部品40,000点が対象!?半導体業界を揺るがすPFAS規制とは」で解説しています。

調達・品質・設計担当がいま取り組みたいこと

3つの規制は仕組みこそ違いますが、対応の土台は共通しています。どの製品の、どの部品に、どの物質が含まれているかを把握できているかどうかです。

1 部品ごとの含有情報をBOMの単位でそろえる

規制の更新があったときに最初に問われるのは、「自社のどの製品が影響を受けるか」です。部品ごとの材料情報をBOMと結び付けて持っていれば、SVHCの追加やPFASの規制強化があっても、影響する製品をすぐに絞り込めます。

2 SVHCの更新を半年ごとの定例作業にする

SVHCは6か月ごとに追加が検討されます。更新のたびに慌てて調べるのではなく、更新のタイミングで自社のBOMと照らし合わせる作業を、あらかじめ予定に組み込んでおきます。

3 サプライヤーへの問い合わせの手順を決めておく

データベースで確認できない部品は、サプライヤーに含有情報を問い合わせる必要があります。誰が、どの書式で、いつまでに確認するかを決めておくと、規制の更新や顧客からの調査依頼に落ち着いて対応できます。

4 樹脂や工程材料まで目を配る

2026年2月のSVHC追加のように、規制対象の物質は電気的な機能を担う材料ではなく、樹脂や接着剤、製造工程の溶剤に含まれていることがあります。部品の電気的な仕様だけでなく、構成材料まで確認できる情報源を持っておくことが大切です。

Z2Dataで化学物質規制の対応を効率化する

Z2DataのCompliance Managerは、10億点以上の電子部品のコンプライアンスデータをもとに、REACHやRoHSなど主要な規制に対する部品の適合状況を確認できるツールです。

  • BOMの一括チェック:部品表をアップロードすると、各部品が規制の要件を満たしているか、リスクになりうるかを確認できる
  • 規制の更新のモニタリング:REACHの更新など規制の変化を追い、影響を事前につかめる
  • スコアと証明書:分析結果をコンプライアンススコアや証明書として出力し、顧客や社内で共有できる
  • サプライヤーへの照会の支援:データベースにない部品は、Z2Dataの規制アドバイザリーチームがサプライヤーへの照会や情報の検証を支援する

KUMU Worksは、Z2Data LLCの日本総代理店として、導入から運用までを日本語で支援しています。自社の製品がどの規制にどこまで適合しているかを確かめたい場合は、無料トライアルかデモの依頼からお問い合わせください。

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「Z2Data記事の翻訳」は、Z2Data LLCの記事をKUMU Worksが許可を得て翻訳したものです。日付はnoteでの公開日です。

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